免許取得後の段階トレーニング①脅迫文

遡ること2021年3月9日、私は技能試験に合格し、積年の夢だった(そうだっけ)免許を取得した。

しかし

それでめでたしめでたし♪

とはならなかった。

なぜなら、オーストリアには名づけて段階トレーニングという、免許取得後に必須の、しかも有料の、トレーニングがあるのだ。

いや、知ってたよ?
話としては、そんなのあるらしいよーって、知ってたよ。

でもやっと免許取れてさ?喜んでるときに何ヶ月も後にやらなきゃいけないトレーニングのことなんて考えないじゃん?

そう、忘れていたわけではないが、考えたくなくて、考えないようにしていたら半ば忘れていたのだ。

しかし免許を取得して1年がすぎる頃、交通課から1通の手紙が届いた。

曰く、4ヶ月の間に残りの段階トレーニングやらんと仮免許期間延長するで。
それでもやらなんだら免許剥奪やで。

脅迫文きたー。

というわけで、やってきましたトレーニング。
我ながら腰が重い。この、脅されないと動かない性分って、なおらないんだろうか。

ついに!免許取得

3月9日、免許取得のために技能試験を受けた。

まず言えることは
こなぁ~ゆきぃ~、ねぇ。
と口ずさむ余裕は無かった、ということだろうか。普通ないか。そうだよね。

ひとりの試験官につき生徒は7人。私たちのグループには3人の教官がつき、自分の担当の教官が本番も付き添ってくれるシステムだ。始めにひとりずつ方向転換→縦列駐車→車庫入れをやり、合格なら車についての技術的な質問を3つまで口頭で答える。それも合格ならいよいよ実際に道路に出て25分程度運転するという流れ。通常だと後ろにひとりかふたり生徒を乗せて走り途中で交代するのだが、コロナ規制のため乗車するのは試験官、教官、生徒の3人のみ。勿論マスク着用。
駐車試験は昨今お得意様となった一般駐車場でポールをたててやるのでその後の走行試験もその付近を走ることになるのだが、そこからの走行ルートは知らされない。その場で試験官の指示する通りに走り、高速に乗ることもあれば狭い住宅街をひたすら走らされる場合もある。
ただ、試験官によってお気に入りというか重要視するポイントみたいなものがあり、教官たちがすでに見知っている試験官だとルートを予想することができるらしい。あの試験官は全ての生徒に高速を走らせる、とか、やたら環状交差点をやらされる、とかそんな具合だ。今回私があたった試験官はしかし、うちの教習所では初のお目見えらしく、事前情報がなかった。まぁ、ここまできたらぶっつけ本番、とにかくやってみるしかないなと心を決める。

駐車試験は待ち時間に何回か確認の練習もできたため難なくクリアー。技術的な質問もハンドブレーキという単語が咄嗟に出てこずに長々と変な説明をすることになってしまったが、まぁクリアー。こういうときだけ外人感を出して「あー、ドイツ語で何って言うんだったかしら」とかさらっと言う自分は我ながら役者だなと思う。

そしていよいよ道路に出て実際に運転!

駐車場を出る段階で、高速に繋がる大きな道路ではなく住宅街に入っていったため、信号のない交差点での右方優先と安全確認が重要ポイントだと認識。左右に縦列駐車された車と対向車に内心どきどきしながら運転した。一度50㌔制限の道路に出たが、それ以外はずっと30㌔制限の狭い道をひたすら標識に気を付けながら運転してながーい25分が終了。一度縁石に乗り上げたときはこれで試験終了かと思ったが、試験官から特にコメントはなかった。
駐車場に戻り、フィードバックのコメントをいただく。先に自分で自分の運転をどう思ったか聞かれ、一度右方優先の交差点をガン無視してつっきったこと、右に寄りすぎて縁石に乗り上げたことをミスとして言ってみた。あとは大丈夫だったはず...。でも縁石に乗り上げるのは事故扱いって言われたらもう弁解できないな...。おまけしてほしいな...。

結果は、合格。

ああー
あああー
良かった。

縁石に乗り上げた場所以外でも右に寄りすぎだから気をつけろとか環状交差点は周りを気遣ってもっと素早く動けとか今後の運転の心得的な有難いことを色々言われたが、緊張がとけて安心しきった私の耳にはなんにも届いていなかった。ていうか誰も聞かないだろ、そのタイミングで言われても。

その場で1ヶ月間免許として有効な書類にサインを貰い、終了。正式な免許証は試験料を払い込んだ後郵送されるらしい。

最初の教習こそイメージと現実のギャップに驚愕するしかなかったが、その後は自分でも意外な程楽しんで通えた車の中での時間。これでもう終わりだと思うと感慨深い。
やさしくて我慢強い教官にひたすら感謝である。
結局6回分の追加料金を払い臨んだ試験だったが、結果一発で合格出来たので後悔は少しもない。
よーし、これからウィーンで運転しちゃうぞぅ!

エンスト祭り

7回目にして...最も手に汗握る教習になってしまった。

内容は優先道路、右方優先の練習。
一通や信号機のない交差点が多い住宅街で、誰が優先されるかを確認しながらの走行がメインだった。交差点が多いところでは徐行や停止をすることも多いためクラッチ操作が必須なのだが、今日は教習始まって以来ダントツでエンストを起こしたと思う。

周囲の安全確認をしながら停止しなければいけない場面でクラッチを踏み忘れエンスト。

2速で走っていてスピードを落とす際ギア変換を忘れてまたエンスト。

大きな道路を横切る交差点をさっさと走行しようと焦り、クラッチをはやく上げすぎてエンスト...。

まさにエンスト祭り。わっしょい。

交差点のど真ん中でエンストするとパニクってクラッチ操作が上手くいかず発進できなくなるので、教官に何度か助けてもらった。

わき汗やばい。

ウィーンで技能教習④

3回目の技能教習にして早くも路上で運転するようになったことを前々回ブログに綴ったが、今日はその後の教習の流れを簡単に記録しておく。

4回目の教習内容
この日は教習所から駐車場までの運転も当然の如く担当することに。ウィーンの街中によくある、でも日本だったらただの路駐だよね的な道の脇の駐車スペースからバックで出る時点でどきどき。
練習場として使っていた駐車場付近の住宅街で右折や左折、ギア変換等の練習をし、50㌔制限の道路でカーブや環状交差点に挑戦。そう、こっちでは超頻繁にお目にかかる環状交差点...。

入るのも緊張すれば出るときのウィンカーと安全確認とハンドル操作で完全にキャパオーバー。ああ、パニクった。
初めて1時間40分の教習時間を全て運転席で過ごしたため、終わった際の疲労感が半端なかった。

5回目の教習内容
4回目とほぼ同じ。
発進練習の際、「アクセルは軽く踏んだだけですんごいまわりだす」と必要以上にインプットされてしまったためアクセルを踏み込めなくて、路上でスピードがなかなかあげられない。50㌔制限の道路を時速30㌔で走ったりするので、教官から「アクセル踏んでーもっと踏んでーもっともっと踏んでー」と言われ続ける。
更に、私にはサイドミラーに映る世界を認識する能力が欠落しているらしい。3車線ある広い道路、ウィーンではベルトと呼ばれる環状道路で教官の「いけたら一番右に車線変更してみようか」という発言に、
ルームミラー、右のサイドミラー、肩越しの目線と完璧なる確認をした後、自信を持って私は言った。

「今、車線変更できるのかさっぱり全くわかりません!」

6回目の教習内容
久々(といっても2回ぶりか)に駐車場へ入り、駐車の練習をした。ガレージに見立てたポールから出庫し、方向転換をした後に縦列駐車。未だに車体感覚が少しも育っていない私には難しすぎると思ったが、そこはさすが教習所。いち手順ごと、どのポールがどのミラーにどのように映るかを確認しながらやれば誰でもできるように体系化されており、車体感覚がなくてもちゃんと収まるべきところに車を収めることができた。しかも試験は習った通りに実施されるらしいので安心。まぁ、実際街中で駐車、特に縦列駐車をする際今日習ったことがどのくらい役に立つのかは疑問だが...。

こうしてみると、最初は路上に出るなんてとんでこないと思っていたが、意外に慣れてしまうものである。もちろん教官が横にいてくれて、何かあっても助けてもらえるし、私に責任を負う義務は生じないという甘えを土台にした慣れなのだが。

オーストリアにおける必須技能教習時間は18時限(1時限は50分)らしい。私が通う教習所は2時限でワンセットなので最低9回ということになる。まだまだ優先道路の確認や高速道路、夜間走行とクリアすべき壁が立ちはだかっているが、あと何回通うことになるのだろうか...。あんまり追加料金は払いたくない反面、自分が実技試験を受ける日がくるなんてまだまだ考えたくないためこのままずっと教習していたい...そんなアンビバレンスな今日この頃。

プロフィール写真

随分前からなんとなく、でもずっと気になっていること、それはプロフィール写真。

ここで言うプロフィール写真とはラインと、ヨーロッパのライン的存在であるワッツアップのみを指している。というのも、私はアナログ人間ツイッターフェイスブック等のソーシャルメディアとお付き合いが全くないのだ。

あくまでも番号交換をした友人との付き合いを前提にしたプロフィール写真であるから、素直に自分の顔の写真をアップしている人も多い。あとよく見るのは景色や動物、子供。

そう、気になるのは、子供がいる友人のプロフィール写真。

子供だけの写真や自分と子供が一緒に写っている写真をプロフィールにしている人がとても多い。プロフィール写真の更新に気づく度、素直にかわいいな、と思うのとほぼ同時に、少しの違和感を禁じ得ない。


だって、自分じゃないじゃん。


いや、景色も動物ももちろん自分ではないのだが、それらの被写体に人格はない。綺麗に撮れた、もしくはただ単にかわいい、そうした当たり障りないけれど本人には愛着のあるものと、愛着ならこれ以上ないくらいあるのだろうが自分の子供とは次元が違うと思うのだ。

おもしろいのは、家族写真、つまりパートナーを含めた写真をプロフィールにしている人はほぼ皆無だということ。目にするのは子供だけか、子供と本人。察するに、パートナーは家族といえども別の個人であって、アカウントも別で持っているし、自分のプロフィールとして公開するのはちょっと…という意識的もしくは無意識的な選別がなされているように思う。

では、子供はどうなのか。子供は自分の分身、一心同体ということなのか?

確かに、生まれたばかりの赤ん坊の面倒をみる親は子供を自らの分身と感じることに違和感はそこまでなさそうだ。ほぼつきっきりの世話が必要になるのだし、母親なんて妊娠中は文字通り一心同体だったわけだし。

しかし。それでもしかしと思ってしまうが故の違和感である。自分の子供といえど別の人格を持ったひとりの人間。まだ小さいとはいえその子の写真を自分のプロフィールの顔にしてしまうのは違うんじゃないかなと思う自分がいる。もちろん人が何を自分のプロフィール写真に設定するかは個人の自由だし批判するつもりは毛ほどもないのだが、自分ではやらないだろうなと思うのだ。

ただ、周りの友人たちがちらほらと子供を持つようになって数年。増え続ける子供のプロフィール写真を見ていたら、この違和感は私が親でないから持つもので、もし自分の子供ができたら、即、我が子のかわいいかわいい写真を自分のプロフィールとして公開し始めるのかもしれない、という考えがよぎった。

目下、近々親になる予定の私のもっぱらの関心事は、自分のプロフィール写真が今後どう変化していくかということである。

ウィーンで技能教習③

危惧していたとおり、3回目の技能教習にして早くも路上進出を果たすことになった。

教習の内容は以下の通り
・前回までの復習(発進と停止、左折右折、ギア変換、坂道発進)(そういえばS字はやらなかった)
・左折右折の際の安全確認
・路上でぶっつけ本番

急ピッチで前回までの復習を終えた後、まずは駐車場付近の住宅街で左折と右折の練習(?)をした。練習といっても普通の住宅街であるから、対向車は来るし後ろから追い越す車も来るしでどきどきだった。更に道が狭い上にずらっと縦列駐車された道を進むため、車体感覚に自信がない私はビビりまくり。片方が避けないと対向車が通れない程狭い道なので、十字路を曲がりいきなり対向車に気づいたときは焦りすぎて駐車してある車にぶつけそうになってしまったりもした。教官もさすがにブレーキ踏んでたな...。ハハハ。

それから予告通り駐車場から教習所までの道のり(約6㌔)も私が運転をすることになった。前にも後ろにも一般車両がいる状況で焦りまくり、発進の際2度程エンストも起こしたし、広い道路で反対車線に入りそうになったり、他にも色々やらかしたと思うが、正直細かいところは記憶がない。
それでも何回かふと我に返り、自分が路上で車を運転している状況になんとも言えない不思議な気持ちになったりした。

今回わかったことは、ウィーンにおいて運転は路上でぶっつけで練習するものとされているようだ、ということである。だから教習所の車が走っていると周りは警戒してくれるし、エンストしてもトロくてもまぁイライラはするんだろうがしょうがないこととして一応許してくれるらしい。
教官曰く、「今車を運転している人たちも皆が経験したことだからね~だからなかなか発進がうまくいかなくても後ろの車は気にしなくて大丈夫!」らしい。
最初から完璧に運転できる人なんていない、ということか。
そもそも練習をしている駐車場は時速30㌔制限のため、その中ではギア変換も2までしかできない。道路に出て初めて、ギアを3まで入れて40㌔出す練習(と言っていいのかわからないが)ができるというわけだ。

日本で免許を取った姉によると、日本で路上に出るにはまず最低15時限(マニュアル車の場合)の技能教習を受け、仮免許を取ってかららしい。

なんという違いであろうか。

ということはしかし、今回の技能教習で驚き続けた私の感性はまだまだ日本的だったということだ。

...いいんだか、悪いんだか。

ウィーンで技能教習②

驚愕だった初めての技能教習を終えて、今日は2回目。前回驚きっぱなしで正直教官の話もちゃんと聞いていなかったのだが、今回はあらかじめ一般駐車場に連れていかれることもわかっていたため少しはリラックスして(当社比)臨むことができた。

内容は以下の通り。
・前回の復習(車の目視点検、座席調整、発進と停止、ハンドル操作、左折右折、ギア変換)
坂道発進半クラッチ、ホールド機能、ハンドブレーキを使った3通り)
・ポールを使ったS字走行

クラッチの操作には少し慣れてきたが、ハンドル操作がイマイチ。特にバックになるとどこにハンドルを切ると車がどの方向に発進するのかよくわからず、とりあえず教官に言われた通りに回してみるだけ。これじゃ自分で運転なんてできないな...。
あと、右側走行でキープライトなわけだが、車体感覚が掴めていないためどこまで右に寄っていいのかイマイチよくわからない。縁石ならちょっと攻めたりできそうなもんかと思いきや、私たちは一般駐車場を走っているわけで、右側には駐車してある一般車両がズラリ...。追突が怖くて寄せられないよ!

駐車場をぐるぐる周っての教習、出入り口に近づくほど行き交う一般車が気になり足元が疎かになってしまう...。ギア変換も教官にそろそろ入れて、と言われないと自分からは考えが及ばない。う~ん、運転って、最初は気をつけることが多くてやっぱり難しいな。

50分が過ぎ、教習所に帰る際にはまた「運転してみる?」と言われるも、即座に丁重にお断りした。
前回は冗談だと思って聞きもしなかったのだが、技能教習1、2回目で公道に出る人も本当にいるらしい。前回の発言は本気だったのか。

「強制はしないけど、いつかは出なきゃいけないからね~」

それはそうだけど...わかってるけど...まだ無理。日本で受ける教習の流れが全くわからないのだが、皆こんなに早く公道に出ているのだろうか。

次回は帰りの運転を担当させられそうな予感。道もわからないのに、どうなることやら。