オーストリアの欠勤事情

風邪で会社を休むとき、オーストリアでは有給を使うことができない。有給はあくまでも休暇、息抜きに使うべきであり、尚且つ前もって計画する休みのことだからだ。当日の朝連絡して「今日有給で休みます」は認められない。
そして病気や怪我で休むときは就業不能証明というものを雇用主に提出しなくてはならない。かかりつけの医師が発行してくれるもので、この期間体調が悪いので働けませんよということの証明書なのだが、大抵の職場で病欠する当日の日付が書かれたものが必要になる。

しかし医者に行けない程調子が悪いときもあるだろう。医師にかかるまでの受付、そして長い待ち時間はそもそも体調が悪い者にとっては相当辛い。そういう時はどうするのかと思っていたのだが、先日自分自身が医者に行けないくらい調子が悪くなって疑問が解消された。

「医者ダイアル」とでも訳そうか、Ärztefunkというサービスが存在するのだ。電話して病状を説明するとそんなに待たずにその日当番の医者が家に来てくれる、訪問サービスだ。病院が閉まる平日の夜と週末のみ利用できるのだが、処方箋も書いてくれるし、同じ医者にまたかかりたければ病院があいている時間に行けば良い。
実際に私のところに来たのは30半ばくらいの若い医師で、解熱剤を飲む判断と咳を楽にする錠剤を処方箋に書いてくれた。手が痺れたような感覚が続き不安だったのだが、それが高熱と咳からくること、肺に異常はないのでじき良くなるから心配しなくていいと言われたので安心した。
救急車を呼ぶ程の大事ではないが自力で病院に行くのは辛い、という人には使えるサービスだと思う。

ちなみにオーストリアでは従業員が病気や怪我で働けない場合、雇用主はその1日目から最低でも6週間(雇用年数によって違う)は働いていたら給付されるべき金額の全てを支給する義務がある。更にその後4週間は雇用主が半額負担、社会保険が半額を補填する。それから更に欠勤が延びると初めて社会保険が給料の全額を保証してくれる(最大1年)。これは他のヨーロッパ諸国と比較しても大変充実していると言える。
もちろんこのサービスを維持するために毎月給料から天引きされる社会保険料はばかにならないし、企業も同じ金額を負担する。オーストリアは人件費が高いとよく言われるが、その理由はこんなところにあるのだ。