外部記憶装置

ここ何日か、写真の整理に時間を費やしている。

ハードディスクに保存後放置していた写真たちを吟味し、ふるいにかけとっておきたい写真をクラウドにアップデートする。私は写真が趣味というわけではないのでこれらはほとんどがどこか旅行に出た際に撮ったものだが、何年もさぼっていた作業だけに量も多い。

整理がてら、ついでにフォトブックも作ろうと思い立った。データの写真は見る機会がほとんどないが、まとめて本にすれば気軽に手に取ることができる。旅のひとつの総括ができるのも楽しい。

まず、旅のスケジュールを確認する。そして場所ごとに使用したい写真を選別し、サイトにアップデートする。あとはそれを時系列に沿ってバランスを取りながら並べていく。時々注釈程度に文章を考える。

たったこれだけなのだが、この作業をしていると時間がたつのを忘れる。旅の間つけていた日記を引っ張り出してその時の思い出に浸ってしまうからだろうか。何なら旅行中はしっかり読まなかったパンフレットも熟読してしまう。楽しいだけではなかったハードな旅も、それを思い出すときには例えようがない程甘く、愉快になってしまうのは不思議なことだ。

そんなことをするうち、日記にはさまっていたバスのチケットを見つけた。出発地や目的地、出発時刻を目で辿っていくうち、突如、旅の情景が目の前に浮き上がってくるように感じた。混雑したバスターミナルの様子や蒸すように暑いバス内の空気。目的地までたどり着けるのだろうかという一抹の不安とともにリュックをあずけたときの感触まで思い出せる程それは鮮やかで、しばらくぼうっとしてしまった。

旅から持ち帰ったちょっとしたものを捨てられないのは、それが時には写真や日記以上に、かけがえのない経験を思い出すための外部記憶装置の役割を果たしているからかもしれない。