それだけは

義母がケーキを焼いてくれた。義両親が大好きなボローニャの思い出の味らしい。

義父は定年を迎える以前、世界の色々な都市に出張することがあり、状況が許す限り義母も同行していた。中でも年に1度ボローニャでの滞在はふたりとも楽しみにしていて、特別な思い入れがあるようだ。車のトランクに小さな焼菓子をいっぱいに詰め込んで帰ってきたのは何年前だったか忘れたが、私にも記憶がある。

素晴らしい思い出だ。
ケーキを焼いてくれるのも本当に有難い。

こういうのはおいしいとかおいしくないとかいう問題ではない。私だって重々承知だ。何よりもその気持ちが大事なのだし、よもや何が正しいとか、間違っているとかいう議論を持ち出すのもお門違いだ。このケーキだってその土地の風土や歴史、人々が培ってきた生活の知恵の賜物でありそれが文化と呼ばれるに至りさらに広範囲に伝わることで多くの人々に受け入れられてきたのだろう。なんて素晴らしい。


しかし、あえて言わせて貰う。


米をミルクであまーく煮るのはやめてくれ。
そしてそれをケーキに入れないでくれ。

それだけは。

多分、一生無理。