即席ヘアーサロン

オーストリアではレストラン等の飲食店と同様、美容室も営業許可が出るのを待っている状況だ。

外出規制が始まった週に美容室の予約をしていた夫は完全にタイミングを逃し、そのとき既に崩れていた髪型をだらしなく伸びるがままにさせていた。人と「会う」のはオンラインに限られ、出かける先はスーパーへの買い物一択なのだからそれでも構わないのだが、6週間が経ちさすがに邪魔そうなので切ってやることにした。失敗したところでこの状況である、恥をかくこともあるまい。

私は特に人の髪を切るのが得意というわけではないが、今まで何回も女友達の髪を切ってきた。というのも、海外で生活する多くの日本人、特に女性にとってどこで髪を切るかというのは切実な問題なのだ。だいたい皆、可能な限りは帰国した際に自分の好みを細かく言葉で伝えることができ、美意識とトレンドと髪質が剥離していない日本のサロンへ行く。まさに安全パイ。しかし海外生活が長くなるにつれ遅かれ早かれ、それではどうにも立ち行かなくなる日が来るのだ。そして地元の美容室という魔の扉を開くことになる。私がウィーンでしてきた失敗は、国際的なネーミングの大きなサロンならなんとなくそれなりの出来になるんじゃないかと思ってしまったことだった。結果いくつかの美容室を試したが、大枚をはたいたにも関わらず出来は友達が切ったときとどっこいどっこい。それで1万円近く取られることを考えれば自ずと未来の行動指針も決まってくるというものである。

今日は強風で髪をあおられながらの作業だったこともあり相当なやっつけ仕事になってしまったが、まぁそれなりの出来にはなった。毛量が少ないネコ毛、そしてくせが強い髪は適当に切ってもそれなりの形に収まるものなのだ。日本人の髪質だとこうはいかない。ために、私の髪型はくずれっぱなしである。