通りもの

今朝、通勤途中の駅でのことである。

ホームへと続くエスカレータから降りて歩いていた私を、後ろの人が追い越していった。既にホームに停車していた電車に乗りたかったようだが、扉はすでに閉まっている。扉を開けようと開閉ボタンを連打しながら何やら大きな声で言っていたが時既に遅し。
しかし乗れないのわかると、

「ふざけんじゃねーよ!」
「中国人がダラダラ歩いてるから逃しちまったよぉーそこの女だよ中国人!」

とこれまた大きな声で叫び始めた。

その言葉は、明らかに私に向けられていた。
無視して歩いていたが、内心はどきどき。後ろから掴みかかられでもしたらどうしようと思っていた。タイミング良く私の乗る反対車線に電車が入ってきたため立ち止まることなく乗車し、少しほっとした。

まともでない輩とは関わり合いになりたくないし、無視するのが1番とわかってはいても、何も出来ない自分に少しイライラしたのも正直なところだ。

こういったあからさまな差別に行き合ったのは、考えてみれば初めてかもしれない。もしかしたら私が鈍いのかもしれないが、海外生活8年程にして今までこういったことが無かったのは逆にラッキーなのだろうか。話には聞いたことがあるが、実際にあってみると確かに嫌なものだな、と思った。

ただ、こういったまともではない輩からの攻撃は通りもののようなものだし、見た目からくる差別になったのは今回たまたまだとも思う。攻めやすい奴、と思われるのは非常に癪だが、気違いをまともに取り合ったらこっちの負けである。

嫌な1日の始まりを払拭すべく、パン屋でお気に入りのチョコクロワッサンを買った。オフィスに入り真っ先にコーヒーを入れ、働く前からコーヒーブレイク。これで愚痴れる同僚がいてくれれば最高なのだが、今日はものの見事に誰もいなかった。まぁ、パン屋が開いていただけ良しとしなければならない。